東京都におけるソーシャルキャピタルと自殺との関連

岡本真澄、川上憲人、木戸芳史、桜井桂子による研究論文より

近所に住む人への安心感・信頼、所属感、地域活動への参加など「社会の問題解決や目標達成に向け地域住民が集結し行動を起こすために必要な要素」を総称してソーシャルキャピタルと呼んでいます。これまでにソーシャルキャピタルと不安・抑うつ、主観的健康感などメンタルヘルスの問題との関係が示されており、この研究では東京都の各行政区におけるソーシャルキャピタルと自殺率との関係を分析しました。

ソーシャルキャピタルについては、東京都内20市区町村の20歳以上の住民から100人ずつに対して行ったアンケート結果(たすけあい街づくり東京調査(2009年、回答率28%)を用いました。自殺率については内閣府「地域における自殺基礎資料(2003〜2007年)」から年齢を加味した自殺率のデータを使用し、行政区のソーシャルキャピタルの強さによって自殺率が異なるかを男女別に調べました。

女性においては行政区ごとのソーシャルキャピタルと自殺率との間に有意な関連は見られませんでした。一方、男性においては「近所の人への信頼」が低い地域ほど自殺率が高いことがわかりました。自殺率に影響を及ぼす要因とされている人口密度、失業率、老年人口割合などを加味した解析においても男性における「信頼」と自殺率との間の関連には関連が見られました。

この研究では、男性においてのみ「近所の人への信頼」が低いほど自殺率が高くなることがわかりました。地域におけるソーシャルキャピタルが低いほど自殺率が高まる可能性が示されましたが、性別によりその傾向は異なるようです。男性は世帯主であることが多く、家計を支えるプレッシャーなどから女性に比べて精神健康状態が悪く、「地域の信頼」が健康に影響を及ぼしている可能性があることが考えられます。

出典:Social capital and suicide: an ecological study in Tokyo, Japan. Environmental Health and Preventive Medicine