テクニカルノート (2001.11.20更新)
「仕事のストレス判定図」で使用されている「健康リスク」計算の根拠について解説します。
健康リスクの計算には、「多重ロジステイックモデル」を利用した予測式を採用しています。これらの式から計算される「健康リスク」は、左図のようにさまざまな健康問題の危険度を予想するものです。表記を統一し、簡便にするために、「仕事のストレス判定図」では全国平均の健康リスクを100として表すようになっています。健康リスクはそのまま健康問題が平均の何倍おきやすいかの数値と考えられます。つまり、健康リスク120の職場は、仕事のストレスのために心理的ストレス反応、疾病休業、医師受診率が1.2倍多い職場ということです。
健康リスクは以下のような計算式で算出されいます。
仕事の量的負荷−コントロール判定図
・健康リスク=100×EXP((量的負荷の平均点−A)×α+ (仕事のコントロール平均点−B)×β)
職場の支援判定図
・健康リスク=100×EXP((上司の支援平均点−C)×γ+(同僚の支援平均点−D)×δ)
総合健康リスク
・量的負荷−コントロール判定図の健康リスクと職場の支援判定図の健康リスクを掛け合わせます。
注:EXP (X)は、自然定数のX乗を意味しています。定数AからDは全国平均、αからδまでは係数です。これらの数値は性別と調査票の組み合わせによって決まっています。
表 「仕事のストレス判定図」における4つの職業性ストレス要因から健康リスクを計算するための係数(平成11年度労働省「作業関連疾患の予防に関する研究」報告書より最終案)*
調査票 |
性別 |
量的負荷(要求度) |
仕事のコントール |
上司の支援 |
同僚の支援 |
||||
|
|
全国平均(A) |
回帰係数α |
全国平均(B) |
回帰係数β |
全国平均(C) |
回帰係数γ |
全国平均(D) |
回帰係数δ |
JCQ |
男性 |
32.7 |
0.061
|
67.3 |
-0.036
|
10.8 |
-0.085
|
11.2 |
-0.211
|
|
女性 |
31.3 |
0.025
|
58.8 |
-0.022
|
10.5 |
-0.073
|
11.0 |
-0.179
|
NIOSH職業 |
男性 |
37.3 |
0.038
|
47.5 |
-0.035
|
14.8 |
-0.097
|
15.2 |
-0.097
|
性ストレス調査票 |
女性 |
35.2 |
0.009
|
38.5 |
-0.010
|
13.8 |
-0.075
|
15.2 |
-0.083
|
職業性ストレス簡易調査票** |
男性 |
8.7 |
0.076
|
8.0 |
-0.089
|
7.6 |
-0.097 |
8.1 |
-0.097 |
女性 |
7.6 |
0.048
|
7.9 |
-0.056
|
6.9 |
-0.097 |
8.1 |
-0.097 |
* 量的負荷−コントロール判定図では、健康リスク=100×exp{(量的負荷平均点数−全国平均)×回帰係数+(仕事のコントロール平均点数−全国平均)×回帰係数}と計算する.職場の支援判定図では、健康リスク=100×exp{(上司の支援平均点数−全国平均)×回帰係数+(同僚の支援平均点数−全国平均)×回帰係数}と計算します。以上の係数は、2万人の労働者の調査データにおける各尺度の点数と心理的なストレス反応との関係を解析した結果に基づいています。簡易版ストレス調査票の係数は直接のデータではなく、NIOSH職業性ストレス調査票から求めた係数に、換算式をあてはめて求められています。
** 職業性ストレス簡易調査票の平均値は平成11年度ストレス測定グループ(責任者、下光輝一東京医科大学教授)の研究成果(平成11年度労働省「作業関連疾患の予防に関する研究」報告書)から提供を受けました。なお、東京医大HPに掲載のプログラムではその後の調査データの蓄積に基づき赤字のように平均値が訂正されていますので、本HPに掲載のエクセルとは結果が異なってきます。これから使用される場合には東京医大のプログラムの数値を使用されることをお勧めします。