JCQ日本語版の開発プロセス

1991年に米国ニューヨークの米国公衆衛生学会でKarasekからJCQのコピーを入手した川上は、小林章雄教授(愛知医大)、原谷隆史主任研究官(産業医学総合研究所)他とともにコアとなるJCQ45項目の翻訳にとりかかりました。JCQはまず著者らによって英語から日本語に翻訳案が作成されました。ついで、英語に堪能な日本人によって翻訳案を再度英語に翻訳(逆翻訳)し、これを原文と比較することで翻訳の適切さを検討しました。この逆翻訳は、Karasek教授にも送付し、翻訳の修正についてコメントをいただきました。この後、中部地方の通信会社および電力会社の従業員にJCQ調査票を用いた調査を実施し、このデータからJCQの4つの尺度(要求度、コントロール、上司の支援、部下の支援)の信頼性(内的整合性による信頼性)および妥当性(因子的妥当性、構成概念妥当性)を検証しました。この結果は以下の論文に掲載されています。

Kawakami N, Kobayashi F, Araki S, Haratani T, Furui H: Assessment of job stress dimensions based on the Job Demands-Control model of employees of telecommunication and electric power companies in Japan: reliability and validity of the Japanese version of Job Content Questionnaire. Int J Behav Med, 2: 358-375, 1995

その後、あるコンピュータ企業でJCQを実施する機会があり、JCQの信頼性と妥当性をコンピュータ技術者で再検討するとともに、前の調査では検討できていなかった身体的労作に関する尺度の信頼性と妥当性を検討しました。この結果は以下の論文に掲載されています。

Kawakami N, Fujigaki Y: Reliability and validity of the Japanese version of Job Content Questionnaire: replication and extension in computer company employees. Ind Health 34: 295-306, 1996.

1998年には、米国、カナダ、オランダ、日本のサンプルについてJCQの平均点、標準偏差、尺度間の相関、信頼性について国際比較した結果が好評されました。日本語版の平均点や信頼性係数は他の国での結果と非常によく類似しており、JCQは職業性ストレスの国際的に利用できると考えられています。この結果は以下の論文に掲載されています。

Karasek R, Brisson C, Kawakami N, Houtman I, Bongers P, Amick B: The Job Content Questionnaire (JCQ): an instrument for internationally comparative assessments of psychosocial job characteristics. J Occup Health Psychol 3: 322-355, 1998